東立電機株式会社編・第2話「ヒーターの画期的な新製品を考案せよ」
◆文:菰田将司
保守的なヒーター業界に新風を巻き起こす東立電機株式会社と学生とがコラボしながら、ヒーターの新提案を行っていく「東立電機株式会社の新製品を考案せよ」ミッション。
今回はいよいよ学生達が考えた新製品のアイデアを加藤貴久社長にプレゼンしていく!
今回のミッションに参加する学生
城間純平君 (法政大学4年)
立岡佑亮君 (慶応義塾大学2年)
佐藤光(文化服装学院2年)
プレゼン1、一人暮らし男子からの熱い要望、カップラーメン専用湯沸し機
加藤社長、カジュアルな格好ながらも、威圧感があります!
対するトップバッターは城間純平くん(法政大学)。
城間:ぼくが考えたヒーターの新製品はカップラーメンの湯沸かし器です!
学生の一人暮らしと言えば、カップラーメンは不可欠。でも、やかんや鍋でお湯を沸かすと、お湯が残ったり、足りなかったり。お金がない学生なら、そんなムダも節約したいと。
そこで考えたのが、カップに目盛りがついていて、ちょうどカップラーメンにぴったりのお湯を沸かすことができる装置です!
目盛りにはどん兵衛ラインとか、カップヌードルラインとかがあって、そこにあわせるだけでいい。水を入れて装置にセットしたらスイッチを入れるだけで短時間で沸騰する。他にも分量の計れるカップをセットすることができて、コーヒーやスープなども適量で作れる。
ターゲットは一人暮らしで節約家、そして面倒くさがりの人。課題は、そういう層を狙った商品なので、値段は低く抑えたい。
イメージとしては3000円〜5000円くらい。あと、学生が興味を惹かれるようなオシャレな外観のものにしたいと思っています。家電店ではなく、ヴィレッジヴァンガードのような雑貨店でも置いてもらえるような
加藤社長:ウォーターサーバーに近いかな。ウォーターサーバーにも温度設定ができるのがあるけれど、赤ちゃんのミルクを作るときに便利なんだよね。そういうことを考えると、カップ麺に特化したものもアリ。
ただ現実的に考えると、カップ麺程度だと、一度に200CC位しか沸かさないから、あまり出力の大きなヒーターは使えないな。しかし、出力が小さいと沸騰までの時間が伸びてしまう。そこがネック。そういう装置なら沸騰するまで早いほうがいいよね。早ければ、それが売りにもなる。
どれだけ水を使うのか、何分で沸くのがいいのか。そこを詳しくリサーチして適正値を出せば、ヒーターの出力と大きさが決まる。それが決まると外装が決まる。ヴィレッジヴァンガードのようなところに置くことを考えているのなら、そこは拘りたい。
あと、カップ麺なら、フタ抑えが欲しいね。待っている間にいつの間にかフタが空いているの、イヤなんだ(笑)
もうちょっと練ったアイデアにする必要があるね。
プレゼン2、ターゲットは女子。缶コーヒーをずっと温かく飲める保温ポーチ
加藤社長の反応を探るようにして、「実はもう1個考えています!」とはにかみながら、もう一枚のフリップを取り出す城間くん。
城間:寒い時期、ついつい買ってしまうのがペットボトルのお茶や缶コーヒーです。しかし、買ってすぐ飲みきらないと、冷めてしまって台無しになってしまう。肉まんみたいな温かい食べ物とかも同様です。
そこで、ヒーターを内蔵して保温ができるポーチを考えました。二重構造にして遮熱し、中に入れたものを長時間温かく保てる。また外側のデザインも、女子が喜んで使ってくれるものにします。
ポーチって、女のコはみんな持っているもの。だから、女子に訴求力はあると思います。
おしゃれアイテムでもあるので、ブランドが必要かもしれません。どこかのブランドとタイアップして、人気のモデルに使ってもらったりすれば、注目されると思います。
課題は、女子用にかさばらず軽いものにしたいので、ヒーターが入れられるかどうかと、長時間保温できるのかどうか。こういうのでオシャレなのはないと思うので、見込みはあると考えます」
加藤社長:「う~ん、常時発熱させるのは、電力を使うから難しい。それが持ち運びするものならなおさら。発熱させるよりそれをキープするほうが電力を使う。
だから予め温めておいて、それを持続させるようにしたほうがいいかも知れない。
家庭用電源や、例えばUSBとかから繋いで発熱させる、なんてことは構造上可能。二重構造で冷めにくい構造をしているんだから、温めたい時にスイッチを入れる、というのはどうだろう。
他にどんなものが入れられたら便利かな。肉まんは、買ったらすぐ食べるだろうけど、弁当やスープ、手袋。そういうのが入れられれば、応用範囲は広がる。冬場がメインだけども、夏には普通のポーチとして使えれば、一年通して使える商品になるね」
プレゼン3、バーベキューをもっと手軽に!炭加熱機能付きバーベキューコンロ
城間:実はもう1個考えてきたんです!
僕は以前バーベキュー場で働いてたので、炭に火をつける大変さを痛感しています。炭はなかなか火がつかず、しかも温度を維持するためにはずっと風を送り続けなければならない。
家族が楽しんでいる脇でお父さんが炭を扇ぎ続けている、なんて風景も見かけたりします。
そこで、炭に火を入れ、更に熱をキープできるバーベキューコンロを考えました。大体、バーベキューに行ったら、火をつけるのは男の仕事。
必死で火をつけている後ろで、女のコたちがまだーって待っている。それを3分でできたらカッコいいじゃないですか。それは家族でも同じ。お父さんカッコいいって。
仕組みとしては、ヒーターが内蔵されていて、炭がすぐ火がつく温度になっているものです。
課題は安全性とユーザーフレンドリーな取り扱い。高温になるでしょうから、冷めてから取り外しができるような仕組みとチャイルドロックは必要です。
今は楽に優雅にバーベキュー、というのは流行っています。そういうニーズにも合致するのではないでしょうか」
加藤社長:これはなかなかおもしろいね。今は屋内でもやるようなので、それなら電源は引っ張ってこれる。今まで障害だったのは、屋外には電源がなかったから。取り扱いについても、洗うことについては問題なし。
となると問題は炭。ヒーターに置くだけでは火はつかない。あと風を送り込む装置も必要かな。
家内がお茶をやるんだけど、茶釜の下の炭になかなか火がつかない。ガスコンロで炭に火を当てても、それでも難しい。
だから常に同じ熱を与えられるヒーターは炭火に向いているかもしれない。炭おこし用のヒーターを別モノで開発するのもあり。
提案4、「食卓に幸せを」その一。匂い無し、安全に使える電気バーナー
城間君のプレゼンが終わり、場の緊張が少し解れた。続く2番バッターは立岡佑亮君(慶應大学)。
立岡:ぼくが考案したのは、電気バーナーです。
肉や魚をガスバーナーで炙ったり、プリンのカラメルを焼く料理がありますが、それがとても気になっていました。
料理の匂いに、ガスの匂いが混ざってしまうのではないか。そうなったら、せっかくの料理が台無しです。また、ガスは取り扱いに充分注意しないといけません。
家庭のキッチンだと、付近に可燃物がたくさんありますし、服に引火する可能性もあります。
そこで、ガスバーナーのように匂いを出すことなく、また危険も少ない、ヒーターの熱で食材を炙るものを考えました。スイッチはオン・オフだけで操作は簡単。できればコードレス、充電式にしたいです。外見は木炭を意識しました(笑)。
ターゲットとしては炙る料理が多くありそうな高級料亭なども考えています。
加藤社長:「確かにあのガスバーナーは気になっていた。ヒーターでは匂いが発生しないので、できたらニーズはあると思うが、ヒーターだと炙るほどの熱を出すのは難しい……。
ウチの主力商品のシーズヒーターは、熱源のニクロム線を金属管に入れて衝撃に耐えられるようにしたもの。
炙るのに使うなら、700〜800度に上げたニクロム線をむき出しにして、その熱を網目に移して直に食材に当てる、というのであれば考えようはある。
ただ、炙るという調理法は、炙って旨みを閉じ込める、というものだから、短時間でできるようにしないといけない。あとは使う人が誤って触れてしまわないように安全性を確保することかな。
提案5、「食卓に幸せを」その二。一人暮らしでも簡単蒸し料理器
立岡:ぼくも、あともう一つ考えてきています。
最近、タジン鍋に人気が集まるなど、蒸し料理が注目されています。蒸し料理の特長は、茹でたら水に流れ出てしまう栄養素も全部摂取できること。自分はよく料理をするので、蒸し料理もやりたいのですが、セイロを用意して水を張って、その下から火を当てたりと手間がかかります。
そこで、卓上で簡単に蒸し料理ができる、一人用のヒーター付き蒸し器を考えました。
この装置はスイッチ一つで蒸気を発生させて食材に蒸気を当てることができます。また従来は下から当てるだけだった蒸気を、横や上からも当てて、効率よく美味しく蒸し料理ができるように工夫ができればと考えています
加藤社長:セイロに関してはもう同様のものがある。例えばバイキング形式の料理を温める装置とかは、同じ仕組み。下からヒーターでお湯を温めて、湯気で料理を保温している。だけど、蒸し方に注目したのはいい。
ダッヂオーブンなんかは上からも熱を与えるし、そのほうが効率がいい。だから湯気は下からという常識は捨てたほうがいい。調査して、最も効率がいい熱の循環方法をできる装置を作る。蒸し加減の調節もできるような商品になれば、実用新案として世に示せるかも。
日本はガスがメインだけど、外国は電気メインだから、電気を利用したキッチンツールは、日本より外国のほうが多い。ヨーロッパのほうには、もうそういう新商品があるかもしれない」
提案6、オシャレを追求。パンの焼き加減が見えるトースターと、オフィス作業の味方ヒーター内蔵マグカップ
2人のプレゼンが終わったあと、前回は参加できなかった佐藤光さん(文化服装学院)もアイデアを考えてきてくれたということでプレゼン。
佐藤:トースター全体がスケルトンになっていて、赤くなっているのが見える。そして中に入れたパンが焦げていく様子も見えるのも楽しいと思います(笑)。ヒーターの線がデザインされていたりしたら、熱が冷めても可愛いく、見た目も楽しいと思います。
あと、マグカップを置いたら温めてくれるヒーターを考えました。『温める』ということをもっと手軽にしたいんです。ただコーヒーを温めるだけにレンジまで行くのは、なんだかワザワザ感が強くて。デスクから動けない仕事をしているような人は助かるのではないでしょうか
加藤社長:おもしろいね。ただ、同じようなコンセプトの商品が発売されていたりするんだよね。ツインバードさんから鏡張りのオーブントースターが発売されているが、これは料理している自分を見て楽しむ、というもの。
パンが焼けていくのが楽しみという人もここにいるのだから、潜在的なニーズはあるのかもね(笑)。
でも、ヒーターもデザインするなんていうのは今までにない発想。どうしても日本の家電ショップに行くと、日本製と中国製のありきたりな物しか無くて気を惹くものがない。だからそういうアイデアは取り入れたい。
カップを温めるヒーターは、USB接続のものなどは既に製品化されているものが多い。専用カップとセットだと作る側は楽。どんな材質にも対応できるようにするとコストがかかってしまうから。
……アイデアとしては既に商品化されているものもある。だけど興味を惹かれないのは『欲しいのに欲しくない』理由があるんだろうね。今、ワザワザ感という言葉があったけど、そういうところが理由なのかも。どうしたら欲しくなるか。そこを考えることが大事」
プレゼンを終えて
加藤社長:みなさん、ありがとうございます。プレゼン、とても楽しめました。若い感覚っていいなって。
ぼくの思いとしては、市場調査とかセールスプロモーションとかを重視して、ある程度のニーズが見込める、というガチガチのプレゼンや結論が欲しいわけではない。
数を見込めることは重要だが、それが全てではない。数が売れなくても、それに魅力を感じてくれる人はいる。自分たちの納得のいくモノのを作ってそれを売る。それがいい時代になっている。
究極をいったら、思いつき先行でいいんです。中小企業ならそれでいい。 まず思いつき。それから市場に似ているものがないかリサーチ。次に、自分がそれを欲しいかどうか。もし欲しくないならそれは何故か。
それを自分のアイデアに組み入れていけば、どんどん完成度の高いモノになっていくと思います。
ということで、今度は、皆さんで蔦屋家電などおしゃれな家電やを一緒に見学しに行きましょう。ヒーターの活用のされ方など、以外なところに存在していたり、皆さんにも驚きがあると思いますので。
果たして今回のプレゼンから商品化されるアイデアはあるのか。次回、オシャレな家電屋さんで洗練された家電製品を見学に行く!の巻。